
ドイツは日本同様、世界でも数少ない水道水が飲める国のひとつです。水の衛生に気をつかわなくていいのはありがたいのですが、水の質は日本と大きく違います。ドイツの水はほとんどの地域でミネラルを多く含む硬水で、場所によっては「超硬水」エリアも。硬水で生活していると、日本では気にしなかったようなことに不便が生じる場合があります。
ドイツの水はどのくらい「硬い」の?
ドイツでの水の硬度は、軟水、中間、硬水の3つに分類されます。
軟水 | 0-8.4°dH |
中間 | 8.5-14°dH |
硬水 | >14°dH |
私が住むフランクフルトは、地域によって差はありますが、日本の基準では「非常な硬水」とされるエリアです。
水質 | 東京都杉並区 | フランクフルト |
---|---|---|
硬度 | 4.6°dH (82 mg/L) | 13.5°dH (241 mg/L) |
カルシウム | 23 mg/L | 68 mg/L |
マグネシウム | 5 mg/dl | 17.3 mg/dl |
ナトリウム | 23 mg /L | 13.6 mg/L |
(出典:平成24年の東京都水道局、2019年のHessenwasser GmbH & Co. KGの資料)
超硬水エリアは比較的中部に点在していて、超硬水に次ぐ硬水エリアが北東部と南部に集まっている感じです(濃いピンクが超硬水エリア、濃い青が硬水エリア)。
(出典:Wasserhärte Karte Deutschland: Mensch, Wasser, Sonne, Wärme & Umwelt, Heft1997, Umwelt-Broschüre der Tegernseer-Fach-Gruppe e. V.)
日常生活で困ること&その対策
ここからは、実際硬水地域で生活していて困る事と、それに対してどのように対策しているかを紹介します。どれも日本では意識したことがなかった困り事です。
(1)シャンプーや石けんが泡立ちづらい
日本から持ってきたアルカリ性のシャンプーや石けんは泡立ちづらくなります。硬水のミネラル分が石けんと反応して石けんカス(金属石けん)を作り出し、本来の洗浄性を奪ってしまうからだそうです。日本でも、水の硬度が高い温泉に行くと同じことが起きます。私は十分に泡だてた石けんやシャンプーで身体を洗わないと汚れが落ちた気がしないので、移住した当初はドイツメーカーの商品を色々試しました。あまり泡立たない物もあれば日本と遜色ないくらい泡立つ物もあるので、実際に使って自分の好みの物を見つけてください。
(2)肌や髪がパサパサになる
日本より湿度が低いドイツは、硬水+乾燥で特に冬場は肌や髪へのダメージが大きくなります。それもあってドイツでは2・3日に1度しかお風呂(シャワー)に入らないという人が多いです。対策としては、お風呂から上がったらすぐに肌と髪を保湿し、冬場は加湿器を使うとよいでしょう。乾燥の厳しいドイツの気候に合わせてか、基礎化粧品のラインナップにはクリーム系がとても充実しています。
(3)湯沸しポットにカルキ(石灰質)がたまる
我が家はポットで沸かす水にはフィルター浄水を使っていますが、それでも1ヶ月もするとポットの底にカルキがこびり付きます。これを放置すると石化して除去しづらくなるので、定期的なお手入れが必要です。カルキ掃除に欠かせないのはお酢。スーパーやドラッグストアで手に入る濃縮タイプのお酢を、水を張ったポットに50mlくらい入れて数時間放置すると、カルキがするっとキレイに取れます。
これは4倍濃縮タイプ。ドイツ生活でのカルキ掃除に欠かせない存在ですが、肌に直接触れるとピリピリするので手に付く心配がある場合は手袋をして扱いましょう。
(4)水道の蛇口にカルキがたまって水の出が悪くなる
カルキは水道の蛇口にもたまり、水流をさまたげます。出が悪くなってきたな、と感じたら蛇口のヘッドを外し(ネジを回せば取れます)、前出のお酢を3〜4倍に薄めて入れたボウルに部品を浸けておくと数時間でキレイになります。私はいつも夜寝る前に酢水に浸けておき、朝起きたらキレイになっているようにしています。
(5)洗った後の食器に白い斑点が付く
食洗機から出した食器や調理器具に白い斑点が付いていることがあります。これは表面に残った水滴が乾燥して石灰質が顕在化したためですが、布巾で軽く拭けば取れます。
(6)洗濯物が変色する
石灰質のせいで、白いシャツやタオルを普通の洗剤で洗うと徐々にグレーに変色していってしまいます。白い物を洗濯する時は漂白成分が入っている白物用洗剤を使うか、Wasserenthärter /Entkalker-Tab(カルキ除去タブ)を併用するとよいでしょう。 カルキ除去タブは洗濯機内の排水管に石灰質がたまるのを防ぐ効果もあるので、定期的な使用をオススメします。
(7)洗濯物が硬くなる
コットン素材のタオルや下着を乾かす時、普通に物干しに干すと海苔のようにパリパリになってしまいます。私の経験上、5%でもポリウレタンなど化学繊維が混じっていればそこまで酷くならないのですが、コットン100%の素材は確実に肌触りが悪くなります。乾燥機を使うのがベストですが、ない場合は干す前に何度か振って素材に空気を含ませてから干すとだいぶマシになります。
(8)お茶が美味しく淹れられない
ドイツに来たばかりの時に、日本にいた時のように水道水でお茶を淹れたらまったく美味しくなかったことがありました。ミネラルを多く含む硬水でお茶を淹れると、苦味が感じられたり香りが弱まるなど味と香りに影響を与えると言われています。お茶を淹れる時にはブリタなどの浄水器を使ってミネラル分を除去するか、ペットボトルの軟水を使うとよいでしょう。軟水の代表格・ボルヴィックは普通のスーパーで手に入ります。

新卒で出版会社に働くが、2年で体調を壊し退職。以後30歳近くまで職を転々とし、終いには地元のブラック卸売り企業で年収300万円残業100時間生活を送る。31歳の誕生日直前にドイツにワーホリで渡航。現在フランクフルト在住。