ドイツ現地採用の悲惨な行く末を晒します | 使えないと言われ続ける日々

ドイツで現地採用を10年間経験した僕が、全員が見逃しているこの決断に潜む大きな落とし穴と、行きつく先の闇を曝露します。はっきり言って重たい現実を突きつける記事になってしまうので、予めお伝えしておきます。

一つ誤解してほしくないのは、一個人の経験だけを元にただただ愚痴を書き綴るつもりはなく、むしろ体系立って、客観的視点や根拠もきちんとお伝えしつつ、皆さんに悲惨な現実を知ってもらいたいと思っています。

移住する前はどんな生活を想像していたか

どの国にも良いところと悪いところがあります。日本は、ご飯が美味しく、治安が良く、四季があり、自然と伝統と科学が融合した素晴らしい国です。

ですが、サービスを受ける側の立場であれば多大な利益を享受できる一方、自分がサービスを提供する側になると、お客様が鬼畜に見え、会社には嫌な奴が溢れかえり、劣悪な労働環境で社畜をさせられる、それが日本です。

そんな日々を送ると日本の良さが視野に入らなくなり、いっそ海外移住を果たしたいと夢を見るものです。僕もそうでした。ざっくり海外。東南アジアは暖かくて物価も安く素敵だし、アメリカはなんとなく憧れるし、ヨーロッパは長い歴史と中世の趣に加えて美男美女の白人が暮らす大陸・・・。

「自分もそんなところへ行き、異世界転生のような人生の再スタートを切りたい」

当たらずとも遠からず、といったところではないでしょうか?

ヨーロッパ移住

そうなのです。こんな漠然としたイメージだけを信じ、現実世界を想像できていないが故に、多くの日本人が移住後に心を壊し、身体を壊し、ろくなキャリアも貯金もない状態で30代半ばか後半で帰国を強いられます。

想像すると恐ろしくないですか?こういった人を少しでも減らすために、僕の知識と経験を振り絞ってありのままの現実を書き留めます。

日系企業の給与水準はドイツ企業よりかなり低い

読者の皆さんから一番よくいただく質問が、”お金”についてです。「どれくらい稼げますか?」、シンプルかつ重要な問いです。結論から述べると、ドイツで日系企業に勤めると、ドイツの給料ヒエラルキーの中ではかなり底辺の集団に属することになります。

ドイツでは日系企業は外資にあたります。日本の感覚では、外資は「給料が高い」です。しかしドイツでは、日系企業に限り、日本人の給料水準がとても低いです。なぜそんなことを言い切れるのか?と聞きたくなるでしょう。

交流のある銀行員や投資家の友人(ドイツ人)とお金の話をして得られた紛れもない事実です。適当に書いているわけではありません。彼らは職業柄、色んな人のお給料を知っています。そして、いつも不思議がられます。なぜ、日本人はこんなに所得が低いのか、と。

理由ははっきりとは分かりません。僕の推察ですが、ズバリ、理由は次の通りです。

  1. 現地採用の給料を日本の本社の給料と比較している
  2. 需要と供給のバランスが悪い
  3. 日本人の能力が低い

お給料、生活水準、とても大事な要素です。タイトルで書いた通り、期待外れの低賃金で働かされまくるのは、海外移住の悲惨な末路と言えるでしょう。さあ、一つひとつ深堀していきます。

現地採用の給料を日本の本社の給料と比較している

もし本社のお給料が低かったらどうでしょうか?自分がずっと日本で社畜のように低賃金で働かされているところを想像してみてください。いざ、駐在員としてドイツに来て、ドイツで日本人を採用する際、こんな感じの思いがあるでしょう。

本社の人間はあんなに安い給料で頑張っているのに、なぜ休暇ばかりで超良好な労働環境にいるお前たちが、本社で奴隷のように働かされた僕たちより高いお給料をもらえるのか?ドイツ人は仕方ない。なぜならドイツにはドイツの給料水準があるから、その水準に合わせなければそもそも人材を採用できない。

ふざけた話ですよね。ドイツの給料水準は、ドイツで生活を営むために出来上がった水準なのだから国籍は関係ないし、勝手に本社の事情を押し付けるなよ、と思います。

駐在員も人間ですから、このような心理が多かれ少なかれ働いていると、僕は確信しています。

駐在員と現地採用の給料

需要と供給のバランスが悪い

これはより憶測の要素が強まりますが、求人募集の数より応募者の数の方が多い可能性は否めません。そうなると、一つひとつのポストの価値が高まり、労働力の価値が下がります。つまり、給料が低くなるわけです。物価や為替と同じですよね。円が安いのは円の価値が下がっているからです。

日本人の能力が低い

辛辣なことを言うことになりますが、単純にドイツに住む日本人の能力が低いという可能性も十分に考えられます。そもそも、優秀な人が日本で活躍し、企業に呼ばれてドイツに来ました、なんて話を聞いたことがありますか?僕はありません。サッカー選手くらいです。

ネガティブな理由で日本を離れようとしている人は、「日本はダメだから捨てる」という上からの言い方をすることでもきますが、見方次第では「日本で認められない人、日本ですら活躍できない雑魚、自分に実力がないことを日本のせいにしただけの負け組」と表現することも可能なわけです。

ドイツ移住組は日本で負け組

そんな人が給料水準の高いドイツに来たから自動的に高いお給料をもらい、勝ち組の仲間入りを果たす、そんなのは夢物語です。日本で活躍できないサッカー選手になることを夢見る20才前後のプレーヤーが、ドイツにサッカー留学に来てよく同じ失敗をしています。彼らの言い分はこうです。

「日本は俺の実力を理解していない」「監督がサッカーを分かっていないから僕を起用しない」

このような勘違いをしてドイツに足を踏み入れるものの、当然何もできずに帰っていきます。なぜなら、”サッカーにおいては後進国である日本ですら活躍できていない選手だから” です。

アメリカのNBAで活躍できるような日本人のバスケットボール選手は、必ず日本国内では頂点に立つようなプレーヤーです。そのレベルに達して始めて、よりレベルの高いフィールドに立ってチャレンジする、という式が成り立ちます。

少し話がずれましたが、現地採用の日本人に実力がないだけかもしれない。企業側を闇雲に否定するだけでなく、包括的な視点を持つことが重要です。

キャリアアップが望めない

キャリアアップが望めないという枷があることも現地採用の大きな落とし穴の一つです。ぶっちゃけて言うと、余程の実力がない限り、駐在員の雑用が仕事になります。また、本社は、海外事業所ができるだけ扱いやすい存在であることを望みます。

乱暴な言葉で言うと、言うことをちゃんと聞く飼い犬がほしいのです。経費削減を掲げてローカライズを実施すると口では言いますが、飼い主を超えるような存在感を持つ現地採用は淘汰されます。

キャリアアップが望めない

結論、実力をつけすぎると恐れられ、忠実な犬でありすぎると、主体性がなくキャリアアップができない。つまり、現地採用でキャリアアップというのは非常にハードルが高く、そして、昇格ができなければ、当然給料も低いままですよね。

若いうちはよくても、40代、50代を迎えてろくに貯金もない、周囲の友達がみんな休暇で高級リゾート地の写真をインスタで上げているのに、自分は節約生活を強いられるし、車すら所有できない、このような未来を迎える人は肌感覚ですが8割を超えます。これが一般的なドイツ現地採用の行く末です。

駐在員との格差

前回書いた「こんな人は現地採用やめとけ!」で、駐在員と給料の格差が激しいことは伝えました。どんなに少なく見積もっても倍は違うと思っていいです。

ただ、何よりも耐え難いのが、裏で”使えない”と言われ続けることです。自分では使えないやつである意識が全くないのに、現地採用は使えない、能力が低い、責任感がない、などと陰口を叩かれるのを気持ちよく思えるのは変態くらいです。

とは言っても、「本当に僕/私は使えないような人間じゃない」と思っていますか?確かに、そこまで能力が逸脱して低い人はそもそも採用されないでしょう。ですが、駐在員が負っている責任、見ている世界、感じているプレッシャーは、現地採用のそれと桁が違います。

立場や給料が違うから当たり前、というのはごもっともな意見ですが、それでも毎日顔を合わせている部下が、何も知らず呑気に5時に帰宅する姿を眺めていたり、口を開けば「ドイツの法律」をかざしてこられると、苛立ってしまうのでしょう。もちろん人間関係は千差万別。このような心理状況が生まれやすい環境であることを認識しておくのが肝要です。

無意味な仕事の連鎖

最後に、そもそも真面目に仕事をしていても、スキルアップが望めないという問題点を掲示します。断言します。駐在員の仕事の8割は本社へのレポートです。本来、レポートより価値があるのはお金を生み出す営業活動、もしくは部下がお金を生み出しやすくするような環境の調整。これがまさにマネージャー職の醍醐味。

しかし、日系企業の駐在員は本社へのレポートに躍起になり、それ以外の仕事をしようとすると、どうしても深夜や土日にもつれ込むことになります。そのため、本社へのレポートは日本人の現地採用にも飛び火するのです。こういったレポート作業は、最初は事業内容を理解する上で大事な要素となり得ますが、徐々にそのプライオリティーは下がります。

加えて、本社向けのレポートを必死に作成しても、それが実際役立っているのか、そもそも読まれているのかどうかも分からないのが現実です。下手をしたら、使う可能性がほぼない予備資料のために一週間を使わされることもあります。このような経験ばかり積み重ねても、どうやって次のステップアップを目指せばよいのでしょうか?

無意味な仕事の連鎖

まとめ

今回はドイツで現地採用をするとき高い確率で経験するであろう道筋を、歯に衣着せぬ物言いで書き綴りました。これはリアルに起こりえる現実である一方、知っていればそうならないように回避する行動を取ることも、実は可能です。ではどのように回避したらいいのか・・・、僕なりの面接時に気を付けるべきポイントをまとめましたので、ぜひそちらを参考にしてみてください。

ドイツで現地採用 – 面接で確認しないと地獄を見る5つのポイント

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