
僕は日本ではいくつか仕事を転々としてからドイツに来て、そこで就職しましたので、日本の会社とドイツの会社との比較をしやすい立場にいます。さらに言うと、ドイツの中にも「日系企業(親会社が日本)」と「ドイツ企業」が存在しており、前者のほうが日本人にとっては就職のハードルは低いと思います。
日本で6年、ドイツで5年働いた経験から、それぞれの仕事環境を比較してみたいと思います。
仕事環境
便宜上、日本の会社、ドイツにある日系企業、ドイツの会社、と3つに分類しました。僕が働いているのはドイツの日系企業です。表を見てもらえばわかる通り、日本の会社とドイツの会社の良い部分を足したような形でしょうか。
日本 | ドイツの日系企業 | ドイツ企業 | |
有給 | 取りにくい | 多い | 多い |
残業 | 多い | 少ない | 少ない |
給料 | 日本水準 | 日本とドイツの中間 | ドイツ水準 |
コミュニケーション | 問題なし | 日本人にとって難易度低い | 日本人にとって難易度高い |
福利厚生 | 良い | 良い | 悪い |
クビになりにくさ | なりにくい | なりにくい | なりやすい |
有給の取りやすさ
有給の取りやすさ、日数の多さでいえば、一番アドバンテージがあるのは「ドイツのドイツ企業」だと思います。一般的に年間30日の有給が取得・消費できます。ドイツにある日系企業も、基本的にはドイツの法慣習にならっているので、それに近しい数字の有給を得ることができますが、純ドイツ企業よりはちょっと少ないような印象です。
日本の会社は、みなさんご存じの通り、有給はあってないようなもので、僕は年間に5日も消化できれば良いほうでした。
残業の多さ
残業の多さを見てみましょう。有給同様、一番優秀なのはドイツ企業で、次いでドイツにある日系企業、最後に日本の会社群、という形になると思います(僕の実体験込みなので、少し日本企業は辛口評価ですが)。
ドイツは法律がガチガチなので、違法残業などは強制できません。それは、ドイツ企業だろうとドイツに進出している日系企業だろうと同じことで、基本的に残業数はゼロか、少ないかのどちらかです。
給料の良しあし
給料でいうと、純ドイツ企業で働いている人の給料が一番良いように思います。僕のようにドイツの日系企業で働いている人は、なんとなくドイツと日本の平均給与の中間値くらいの水準の人が多いように思います(つまり、400万円~500万円スタートくらい)。
勿論、学歴や過去の職歴、成果や資格などでこの値は上下するのではないかと思います。基本的に、日本人でドイツの採用を貰って、年収400万円以上でギリギリ許容範囲、年収450万円以上であれば御の字、500万円以上だと良い部類だと思います。
コミュニケーションのしやすさ
日本人にとってのコミュニケーションのハードルを見ていきましょう。まず、日本の会社で働くのであれば、周りはみんな日本人ですし、日本語が通じるので、全くコミュニケーションに問題はないと思います。
続いてドイツにある日系企業ですが、働いているドイツ人たちは日本が好きだったり日本語を勉強していたりするので、コミュニケーションは一般的なドイツ人たちに比べると楽なように思えます。
最後に、純ドイツ企業ですが、働いている人の話を聞いていると、日本の文化を一切知らずに育ってきた人ばかりなので、かなりコミュニケーション難易度が高いようです。また、ミュンヘンなど訛のある地方の会社だと、ドイツ語が流暢であっても理解が難しいようです。
福利厚生の手厚さ
社宅、交通費補助等福利厚生の手厚さに関して言えば、日本の企業が一番優れているように思えます。方やドイツ企業は、その辺は社員任せで、基本的には全部自分でやってね、というスタンスです。
ドイツにある日系企業はその中間くらいで、補助費を出してくれるような会社も中にはあるようです。
クビになりにくさ
クビになりにくさでいうと、やはり日本の会社&日系の会社にアドバンテージがあるように思います。ドイツの企業は最初の6ヶ月~1年程度試用期間があり、この期間でつかえないと見なされると簡単にクビを切られてしまいます。実際にクビになったという日本人を何人か見てきました。
ドイツにある日系企業も条件は似たような感じなのですが、現実問題でクビになったという日本人を僕はまだ見たことがありません。
総評 どの会社が働きやすいか
さて、いろいろと比較をしてきましたが、どの会社が日本人にとって働きやすいのでしょうか。それぞれに良い点、悪い点あり、個人的にはドイツと日本の良いところを合わせたドイツの日系企業が一番働きやすいように思えます。
純ドイツ企業の有給の多さ、給与水準などは魅力ではありますが、話を聞く限りでは働いている日本人の3割~半分程度が使用期間中にクビになっています。前回記した「就職しやすさ」を考慮に入れつつ、安全にビザを確保しつつキャリアを積んでいくには、やはり日本人であるアドバンテージを活かせるドイツの日系企業が良いのではと思います。

新卒で出版会社に働くが、2年で体調を壊し退職。以後30歳近くまで職を転々とし、終いには地元のブラック卸売り企業で年収300万円残業100時間生活を送る。31歳の誕生日直前にドイツにワーホリで渡航。現在フランクフルト在住。