ドイツでガソリン価格が高騰中!日本の価格と比べてみた

近頃ドイツではガソリン価格が高騰し、リッター2ユーロ越えが当たり前になってきています。日本でも高くなってきているとはいえ160円台半ば(約1.2ユーロ)。なぜこんなに値段が違うのでしょうか?

高騰の背景と、ドイツと日本のガソリン価格、ドイツで安く給油する方法について調べてみました。

世界的な高騰の背景

ガソリンが世界的に高騰しているのにはいくつかの原因が指摘されています。ひとつは、コロナの感染状況が収まりつつある中で、旅行に行く人が増えるなど、急にガソリン需要が回復したこと。そして、今年2月24日から始まったロシアによるウクライナ侵攻によりロシアが経済制裁を受け、世界の生産量の12%(2021年)を占めるロシア産原油の供給が不安定になったこと、が2大要因としてあげられます。

(1)コロナ後の急激な需要増
(2)ロシアへの経済制裁でロシア産原油の供給が不安定に

ドイツと日本のガソリン価格の比較

では、ドイツと日本で店頭価格にどのくらいの差があるのでしょうか?

ドイツでは2011年から、レギュラーガソリンがE10(※1)などバイオエタノールを含む燃料に置き換わっていますので、ドイツのSuper E10と日本のレギュラーガソリンを比較してみます。

※1:E10とは?
「E」はエタノール(Ethanol)の頭文字で、「10」は混合比率、つまり、ガソリンにバイオエタノールを10%混ぜた燃料のこと。

【ドイツのE10価格の推移】

ドイツのE10価格の推移

出典:ADAC e.V.

【日本のレギュラーガソリン価格の推移】日本のレギュラーガソリン価格の推移
出典:経済産業省 資源エネルギー庁「石油製品価格調査」

ドイツでは、リッターあたりのSuper E10価格は2.09ユーロ(5月17日時点)。日本では、リッターあたりのレギュラーガソリン価格は170.4円(5月16日時点)。1円0.0074円で換算した場合、日本のガソリン価格は1.26ユーロで、その差は83セント、つまり100円以上日本の方が安いということになります。

日独の価格差が生まれる理由

リッター100円以上の違いってかなり大きいですよね?!仮に45リットル給油したら4500円も高くなる計算になります。ではこの違いはどこから生まれるのでしょうか?それはズバリ、原油の輸入先です。

冒頭で、今の世界的な高騰の背景のひとつとして、ロシア産原油の供給が不安定になったことをあげました。ドイツはまさに、このロシアへの原油輸入依存度が極めて高いのです。

ドイツの原油輸入先

ドイツは日本よりも原油自給率が高く、約190万トン(2019年)、約2%を自給し、輸入比率は98%です。輸入先の筆頭はロシア連邦共和国(31.5%)で、次いでイギリスとノルウェーのEU加盟国から23.2%をまかなっています。日本とは対照的に、OPEC加盟国からの輸入は23.7%に止まっています。(出典:Bundesverband Erdgas, Erdöl und Geoenergie e.V. “Erdölförderung nach Bundesländern”

ドイツにおける原油の輸入先
Bundesamt für Wirtschaft und Ausfuhrkontrolle “RohölINFO Dezember 2019 (Rohölimporte)”をもとに作成)

ドイツは原油輸入量の実に3分の1をロシアに頼っていたので、現在の原油高はうなづけるものがあります。日本のロシアからの輸入量(4.8%)と比べると、いかにその依存度が高いかが分かります。

日本の原油輸入先

一方の日本は、原油自給率0.5%未満(1970年頃〜2019年)、2019年の輸入比率は99.7%と、原油調達はドイツよりもさらに輸入頼りになっています。輸入先は、中東地域のサウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、クウェート、イラク、オマーンなどで、それらの国々からの輸入量の合計が全体に占める割合は89.6%(2019年)になります。

日本における原油の輸入先
経済産業省「資源・エネルギー統計年報」をもとに作成)

特に輸入量が多い筆頭はサウジアラビア(34.1%)とアラブ首長国連邦(32.7%)で、この2国で全体の約67%がまかなわれています。日本の中東依存度は諸外国と比べて極めて高く、ほかの地域と比べると、例えば2019年の米国では12.9%、欧州OECDでは18.1%です。(出典:経済産業省 資源エネルギー庁「令和2年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2021)」

他方で、ロシア依存度は4.8%と高くないので、今回のロシア産原油危機に際しても大きな被害を被らずに済んでいると言えるでしょう。

ドイツで安く給油する方法

自動車移動が多い人にとって今のガソリン高騰はふところが痛みますが、少しの手間を惜しまなければ直接的/間接的により安く給油する方法はあります。

(1)安いガソリンスタンドや時間帯を利用する

日本と同様、ガソリンスタンドによって価格に差があります。ShellやAralなど大手チェーン系でもエリアによって価格が異なることが珍しくありません。近所で安めのスタンドを見つけておく、給油前に近隣スタンドの価格を比較することでより安く給油することができます。もちろん、高速道路や観光地など、競争が少ない/需要が高い場所は割高になりますので、旅行に行く時は事前に給油プランを立てておくのが得策です。

価格をチェックする際は比較サイト(benzinpreis.de, clever-tanken.de)や携帯アプリ(TankenApp, mehr-tanken)を使いましょう。場所と給油の種類を選んで検索すると、付近のガソリンスタンドの価格一覧を表示してくれます。ドイツのガソリン価格は利用する曜日や時間によって頻繁に変化するので、こまめにチェックすることをオススメします。

(例)ある日のSuper E10のリッター価格
  • Agip Eni:2.099ユーロ
  • ARAL:2.109ユーロ
  • OMV:2.089ユーロ
  • V-Markt:1.958ユーロ
  • Shell:2.099ユーロ
  • Petrol:2.029ユーロ
  • 個人経営:1.948ユーロ

ガソリンが安くなる時間帯は18時〜20時と言われています(反対に早朝や深夜は高い)。また、火曜日・水曜日・木曜日は価格が下がる傾向があるので給油に適しています。反対に、給油する人が増える週末は価格が上がる傾向があるので注意しましょう。

【ある日の時間別ガソリン価格の変動】
時間別のガソリン価格の変動
(参考画像:clever-tanken.de

(2)クーポンや割引サービスを利用する

店舗やサービスがガソリンスタンドと組んで、クーポンや割引コードを配布するキャンペーンを打つことがあります。例えば今だと(2022年5月現在)、スーパーのLidlがShellで給油するとリッターあたり5セント安くなるクーポンを出しています。ADAC(ドイツ自動車連盟)は、Agipでのメンバーカードの提示でリッターあたり1セント割引になるサービスを提供しています。

また、よく行くガソリンスタンドが決まっているならポイントカードを作り、貯まったポイントを割引券に交換する方法もあります。AralはPayback、EssoはDeutschland-Cardというポイントサービスに加盟しています。

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ドイツ政府の対策

今の原油高からくるガソリン価格の高騰は、出口が見えないこともあり消費者は不安を募らせています。個人レベルの対策では限界があり、ドイツ政府も対策に乗り出しています。

2022年6月1日からスタートする予定の “Tankrabatt”は、ガソリンやディーゼルオイルにかかるエネルギー税(Energiesteuer)を軽減することで燃油価格を下げようという施策です。リッターあたり、ガソリンで約30セント、ディーゼルで約14セントの税金が軽減されるので、付加価値税(Mehrwehrtsteuer)と合わせるとガソリンで29.55セント/リッター、ディーゼルで14.04セント/リッター安くなる計算になります。

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