
日本国内に住んでいるような場合でも、引っ越しは簡単な作業ではありません。まして、ドイツで引っ越しとなると、引っ越しの家探し、大家との交渉、諸お役所手続きなど、しなくてはいけない事が山積しています。
今回は、ドイツで引っ越しを行うときに、具体的にどのようなプロセスで引っ越しにいたるのか、またその際の注意点としてどのようなものが挙げられるのか、解説していきたいと思います。
家を探す
まず、大家に引っ越す旨を伝える前に、引っ越し先の家を探しておく必要があります。勇み足で退去してしまうと、思いのほか家探しが難航してしまったとき、ホームレスになってしまい、ビザなどの書き換えに支障をきたす必要があります。
家探しは、友人の紹介などもありますが、オーソドックスなものではインターネットで探す方法があります。以下のようなインターネットサイトを活用し、自身で部屋を探し、大家と交渉する必要があります。
エージェントが間に入らない形式の交渉事の場合、すべてが自己責任となるため、敷金や損害賠償金のもととなる「賃貸契約書」には注意が必要です。いい物件が見つかっても安易に契約を早まらず、まずは賃貸契約書をじっくりと読み、退去通知日が長すぎないか、敷金が高すぎないか、などのチェックを行いましょう。同時に、引っ越し前に必ず内覧をおこない、トイレは問題なく使えるか、隣人に問題はないか、治安の悪い場所ではないか、というところのチェックも欠かさずおこなってください。
それともう一つ、引っ越し前に注意しなくてはいけないのが、「ビザの申請中」は基本的に引っ越しは避けたほうが良い、という点です。というのも、ビザを発行してくれる外人局は、自身の住む町・エリアの住所と紐づいているため、申請中に引っ越しをしてしまうと、また申請が一からやり直しになってしまい、非常にややこしいことになります。
同様に、免許証の書き換え申請中も、手続きが複雑になってしまうため、極力引っ越しは避けたほうが良いでしょう。
大家に通知する
さて、新しい家が見つかったら、続いて現大家への通知を行います。退去時にはいくつかルールがあり、大家との賃貸契約に基づくのですが、大体の場合で、「退去の3ヶ月前まで」の通知が必要になってきます。
仮に直近すぎる退去の場合、大家へ家賃を支払い続けなくてはいけなかったり、自力でNachmieter(次に住む人)を探してくる必要が出てきます。また、Nachmieterを自力で探しても、大家がそのNachmieterを気に入るかどうかは別問題で、場合によってははじかれてしまう必要もあるため、様々なトラブルを避ける意味で、やはり早いうちから大家への通知は行っておくべきでしょう。
原状復帰をおこなう
新しい家が見つかり、大家への通知が済んだら、あとは引っ越しの日時を待つだけです。ただし、満額の敷金返金をしてほしければ、原状復帰をしておく必要があります。具体的には、壁の汚れの修復などがこれに当たります。
どうやっておこなうのかというと、おおよそのドイツ人がこれをDIYで、すなわちホームセンターでペンキを買ってきて、自力で塗装して修復します。敷金に関するトラブルを未然に防ぐため、一度退去の前に大家に部屋を見せ、原状復帰が必要な部分に関しては交渉をしておくとよいでしょう。
引っ越しは身内で
引っ越し自体は、ドイツ人は業者を使わず、自力で、親せきや友人と行うことが多いです。車を借りてきて、みんなで荷物を出し入れし、最後にみんなに飯を奢って解散、というリーズナブルな引っ越し方法がスタンダードです。
勿論、業者を使う方法もありますが、この場合仮に60㎡の引っ越しで近い距離の移動だと10万円程度、遠い距離だと20~30万円程度かかります。
近い距離 | 遠い距離 | |
~35㎡ | 500~1050€ | 1100~1800€ |
~60㎡ | 700~1200€ | 1500~2400€ |
~85㎡ | 1050~1450€ | 2000~3000€ |
120㎡以上 | 1200~2000€ | 2600~3600€ |
参照:Was kostet ein Umzug und wo können Sie sparen?
友人に頼む場合、業者を使う場合、いずれにせよ早いうちからスケジュールを抑えておく必要があるため、引っ越しの1ヶ月前までにはこうした段取りを終えておきたいところです。
住民登録
引っ越しが済んだら、いの一番にしなくてはいけないのが「住民票の書き換え(Anmeldung)」です。市役所に行き、新しい住所を登録しなくてはいけません。これを怠ると(引っ越しから2週間以内に遅滞なく行う必要がある)、最悪の場合、罰金が科せられてしまうので注意しましょう。
もっとも、最近ではコロナの影響もあり、住民登録のためのアポイントが入れづらく、場合によっては1ヶ月先の申し込みになる、というところも・・引っ越しの日程が分かり、賃貸契約書が手に入ったら、速やかに予約をおこなってしまいましょう。
その他住所に紐づいている契約等への通知
住民登録の住所書き換えが完了したら、最後に住所と紐づいたサービスの行われている機関への通知を行い、住所変更をしましょう。特に、ビザに関しては要注意で、新しい引っ越し先の管轄の外人局で手続きを行い、ビザの後ろに新しい住所のシールをペタっと貼ってもらう必要があります。
- ビザ(外人局)
- 銀行
- 会社
- Amazon等
- 在留届け
こうした諸手続きが全て済めば、ようやく引っ越しが完了です。ちなみに、ドイツの賃貸物件の相場観に関しては「都市別ドイツの家賃事情について」の記事を参照ください。

新卒で出版会社に働くが、2年で体調を壊し退職。以後30歳近くまで職を転々とし、終いには地元のブラック卸売り企業で年収300万円残業100時間生活を送る。31歳の誕生日直前にドイツにワーホリで渡航。現在フランクフルト在住。