
ドイツでは、就職の経路では「就職サイト経由」(日本でいうリクナビのようなもの)が一位で、次いで2位が企業HP経由、3位がLinkedinやXingなどのSNS経由、という結果になっています(参照:Statisca)。
さて、この結果、あくまでドイツ就職市場のマジョリティであるドイツ人がアンケート結果の大半を占めているため、我々日本人の就職経路はやや複雑で、就職サイト上にあまり案件の上がらないものはリクルート経由になります。皆さんの疑問にこたえるべく、日本人のドイツにおける就職経路、徹底調査いたしました。
調査と結果
調査方法はいたって単純です。前回の給与水準計算同様、知り合いの聞き込みをベースに作成。今回は仕事上のポジションと就職経路についての項と聞き込み人数を増やしました。以下が、ドイツで働く日本人の友人23人に聞いた結果です。ちなみに、平均年齢は33.9歳、男女比率は15:8で、居住はほぼデュッセルドルフとフランクフルトです。
性別 | ポジション | 企業国籍 | 就職経路 | エージェント | |
1 | 男 | 営業 | 日本 | 商工会サイト | ‐ |
2 | 男 | 営業 | 日本 | 転職エージェント | Career Connections |
3 | 女 | 営業アシスタント | 日本 | 転職エージェント | Adeni |
4 | 男 | エンジニア | 日本 | 転職エージェント | Career Management |
5 | 男 | IT | ドイツ | 就職サイト | ‐ |
6 | 女 | 営業 | 日本 | 転職エージェント | Career Management |
7 | 女 | 営業アシスタント | 日本 | 転職エージェント | JAC |
8 | 男 | 営業 | ドイツ | ‐ | |
9 | 男 | マーケティング | 日本 | 転職エージェント | Career Connections |
10 | 女 | マーケティング | ドイツ | 大学院就職課 | ‐ |
11 | 男 | マーケティング | 日本 | 知人の紹介 | ‐ |
12 | 男 | 物流 | 日本 | 就職サイト | ‐ |
13 | 男 | エンジニア | ドイツ | 企業HP | ‐ |
14 | 男 | 営業 | 日本 | 転職エージェント | JAC |
15 | 男 | 物流 | 日本 | ‐ | |
16 | 男 | 営業 | 日本 | 転職エージェント | Career Connections |
17 | 女 | 営業アシスタント | 日本 | 転職エージェント | JAC |
18 | 男 | IT | 日本 | 転職エージェント | Career Connections |
19 | 女 | 営業アシスタント | 日本 | 転職エージェント | Adeni |
20 | 男 | 営業 | アメリカ | 就職サイト | ‐ |
21 | 女 | トレーナー | 日本 | 知人の紹介 | ‐ |
22 | 女 | 販売 | ドイツ | 職業訓練 | ‐ |
23 | 男 | デザイナー | ドイツ | 職業訓練 | ‐ |
基本的に僕の知り合い、友人の中でアンケートに協力してくれそうな人に聞き込みを行っているため、必ずしも実態を反映しているかどうかは分かりません。また、一部業種は特殊なため、個人特定を避けるため、似たカテゴリのポジション名で括ってしまっています。
日本人のドイツでの就職経路に関する考察
23人のうち日系企業に勤めている日本人の数は16人、日系企業以外(ほぼドイツ)は7人でした。日系企業で働く16人のうち、11人は「リクルーター経由」での就職となります。次いで2人が「知人の紹介が」、ドイツで優勢な「就職サイト経由」はたった2人しかいませんでした。対して、ドイツ(+アメリカ)企業で働く日本人7人の就職経路は多岐に及び、「就職サイト」と「職業訓練」がそれぞれ2人、企業サイト、就職支援課、SNSなど経由が1人ずつでした。
続いて、転職リクルーターの使用頻度ですが、リクルーターを使用した11人のうちの使用比率は以下の通りです。人によっては複数のリクルーターを使用しますが、最終的にオファーのでたリクルーターのみをここではカウントしています。
- キャリアコネクションズ→4件(営業×2、マーケティング×1、IT×1)
- JAC→3件(営業アシスタント×2、営業×1)
- Career Management→2件(エンジニア×1、営業×1)
- Adeni→2件(営業アシスタント×2)
僕も上記リクルーターは全て使用したことがありますが、それぞれ特徴あり。「キャリアコネクションズ(Career Connections)」はポジションの幅が広い、「JAC」は日本に本社がある、Career Managementはドイツが本社、「Adeni」はドイツ初心者に優しい、という印象です。
全体の職種で言うと、約半分にあたる11人が「営業」または「営業アシスタント」(またはそれに類する職種)で、マーケティング系が3人、ITやエンジニアなど理系が4人、物流系が2人、それ以外(講師、販売店員、デザイナーなど)が3人という形になりました。一般的に文系で英語が話せる人材であれば、営業、営業アシスタント、マーケティング、物流のどれかに落ち着くことが多そうです。
さて、以下簡単にまとめです。
- ドイツで働く日本人のうち、7割が日系企業、3割がドイツ企業(ただし職業訓練等含むため、サラリーマンに限ると8:2くらいの割合か)
- 日系企業就職経路最多は「転職エージェント」で、全体の7割
- 日系転職エージェントはドイツ市場に4~5社しかなく、Career Connections、JAC、Career Management、Adeniの4社で市場のほぼ9割近くを網羅していると予想
- ドイツ企業就職経路最多は「就職サイト」で、全体の4割(職業訓練を除く)
かくいう僕も、上記アンケートの中でもマジョリティを占める「リクルーターを通じて転職した現地採用の日系企業就職組」です。
分析
前回の記事で調査した通り、基本的にドイツ企業への就職は英語とドイツ語が必要になってきます。言語スキルに加えて何か職業上の強みが必要なので、給与水準も高い一方で、日本人求人者には難易度が高い傾向にあります。また、成果報酬型の特徴を持つので、日本でいう外資系で生き残れる人間でないと厳しいと言われます。
ドイツ系企業のメリット・デメリット
- 給与水準は高い(ドイツ企業で働く日本人の平均は52000€)
- 高い語学スキルが必要
- 社風はPL学園なみにハード、成果主義
日系企業は日本人のネットワークが活かせ、求められる英語・ドイツ語力も現地企業ほどには高くないので、割と就職がしやすいですが、ドイツ企業に比べて給与水準はやや落ちる傾向にあります。Kununuなどの企業格付けを見ると、社風はまったりしていて良いが、給料はドイツ系に比べると低い、という意見が目立ちますね。
日系企業のメリット・デメリット
- 給与水準はドイツ企業よりも安い(平均で42000€、ただしアシスタント職を含む)
- 英語があれば就職できる
- 社風はまったり
ドイツの日系企業就職で転職エージェントを通じた就職が多いのは、こうした現地の日系企業との太いパイプを持っており、また内部情報秘匿のために就職サイトなどにも出てこない案件を彼らが握っているのが理由のようです。

新卒で出版会社に働くが、2年で体調を壊し退職。以後30歳近くまで職を転々とし、終いには地元のブラック卸売り企業で年収300万円残業100時間生活を送る。31歳の誕生日直前にドイツにワーホリで渡航。現在フランクフルト在住。