
僕はドイツに住んで早5年経ち、ドイツ企業も日系企業も、ホワイトからブラックまで経験を重ねてきました。そんな太一の個人的な感想で、日独企業比較を行ってみたいと思います。
給与
さて、給与についての平均値は以前の「ドイツにおける日本人の平均給与・年収を丸裸にします!」で計算した客観的なデータがあるので格付けが容易です。ドイツの平均給与は49,000€、日本の平均給与は32,000€、そしてドイツの日系企業で働く日本人の平均給与は42,866€と、見事にドイツ>ドイツの日系>日本の日系の図式が成立します。
個人的な感覚ですが、ドイツの物価は日本と比べそこまで差はなく(むしろ野菜などは安い)、夫婦共働きでそれぞれ年収42,000~43,000€あれば世帯年収で1000万円くらいとなり、普通以上の生活が享受できます。
ただ、これには少しトリックがあり、日本よりもドイツのほうが税金が高いので、何だかんだ手取りベースでは目減りします。最も、税金で持っていかれるということはその分が福祉にあてられているというわけで、「医療費無料」「学費無料(国立)」といったメリットがあるわけです。
仕事環境
多くのデータの示す通り、ドイツはワークライフバランス先進国です。つまり、17時には帰れます。むしろ16時や15時に直帰することもできますし、最近はコロナの影響でオフィスにすら行きません。要するに、校則のない学校のようにゆるゆるです(ただし、業界によるという声も)。
これが日系企業やアメリカ系企業となると、残業などが増えます。何故かというと、まず上司が日本人の駐在さんたちなので、彼らの残業文化を引きずります。次いで、時差の影響で、他の国と電話などする機会が多いので、泣く泣く残業が発生します。とはいえ、ドイツの法律でわりと残業規制が強く定められているようで、日本のような地獄残業は発生しません。18時、19時まで残業すると社員が嘆くくらいのノリです。
人付き合い
ドイツでは、完全に仕事は仕事、プライベートはプライベートなので、人付き合いは楽です。今日喧嘩しても、明日には引きずりません。たまに、気心の知れた同僚と、一年に2~3回くらい飲みに行く程度ですね。ドイツにある日系企業では、それなりに日本の文化を引きずっているので、やはり社内の人付き合いは残ります。たまにお寿司を食べたりもいきます(おごってもらえるので、僕は好きですが)。
日本はというと、社内でも社外でも付き合いがあるので地獄です。。。
有給の取りやすさ
ドイツは年間20~30日くらい有給が取れます。つまり、日本でいうお正月休み級のお休みを年に5回程度楽しめるわけです。有給でいえば、ドイツにある日系企業もドイツの法律に基づくので、有給はたくさんもらえます。繁忙期には取りづらいですが。
ただ、よく言われる通り、ドイツの祝日数と日本の祝日数が違う点に注意しなくてはいけません。州にもよりますが、大体年間に10日程度で、振替休日化しないため日曜と被ると損をします。日本では三が日や大晦日を除いても15~16日あり、なんだかんだ20日前後の休みとなります。
専門知識の習得
なんだかんだで、ドイツで働くことのメリットはこの「専門知識の習得」の部分が大きいように思えます。特に、僕のような営業畑の人間でも、ドイツに来てから「え、こんなの勉強させてもらえるの」ってくらい色々学ぶことができました(+英語とドイツ語)。今日本でも流行っている「ジョブ型雇用」の中心地はまさにドイツで、会社を辞めてからも生き抜ける知識を習得することが可能です。
また、これは日系企業についても当てはまることですが、仕事を通じてドイツ語&英語が自然に修練されていくのも大きな強みです。日本で働くと、特殊なポジションや外資系企業以外、英語を使って仕事をする機会には中々恵まれませんが、ドイツであればバリバリ外国語を鍛えられます。3年も住んで働けば、将来日本に帰ることになっても外資系で十分にやっていけるでしょう。
人情
ドイツ企業の良いところばかり見てきましたが、ドイツ企業は冷酷です。成果が出ないと簡単に首切りを行いますし、売上のためには簡単に取引先を切ります。その点、日本企業はなんだかんだ甘いな、というのは感じます(ある意味、そのために残業や人付き合いなどの人情的要素が必要になってくるわけですが)。
というわけで、江戸っ子のような人情や義理堅さを求めるのであれば、日系企業か、ドイツに進出している日系企業でしょう。残念ながら、ゲルマン民族に義理堅さや筋を通させることを期待するのは時間の無駄です。
入社容易度
ドイツのドイツ企業でポジションを得ようと思うと、運の要素が強く働きます。英語もドイツ語もペラペラに話せることが前提であり、加えてエンジニアやリサーチャー、世界中と渡り当たれるバリバリの営業スキルなどが必要なわけで、単に外国語学科を卒業したから就職できる、という世界ではありません。
対して、ドイツに進出している日系企業であれば、英語が話せれば持て囃され、ドイツ語は話せたら給料アップ、というレベルでチヤホヤしてくれます。
合計スコア(総合評点)
色々比較してみましたが、最終的に個人的には以下のような配点になるかと思います(パワプロ風に、Aが最高、Gが最低)。
ドイツの会社 | ドイツの日系会社 | 日本の会社 | |
給料 | A | C | E |
仕事環境 | A | C | F |
人との付き合いの楽さ | A | C | G |
有給の取りやすさ | A | B | G |
専門知識の習得 | B | B | F |
手心・人情 | F | B | A |
入社容易度 | F | B | A |
総合評価 | B~C | B~C | D~E |
給与や有給等、ハード面ではドイツ企業ですが、ソフト面を考慮するとドイツに進出している大手の日系企業辺りがねらい目です。

新卒で出版会社に働くが、2年で体調を壊し退職。以後30歳近くまで職を転々とし、終いには地元のブラック卸売り企業で年収300万円残業100時間生活を送る。31歳の誕生日直前にドイツにワーホリで渡航。現在フランクフルト在住。